第7回 中国における高齢者福祉サービス体制整備の現状に関して
 

  春節(旧正月)休暇も過ぎ、オフィス街にも活気の戻った先日、テレビを見ていた筆者は「“空巣”老人に対するケアを強化しよう」という見出しのニュースに思わず目をこすって見直しました。
 そのニュースによると、「空巣家庭」とは中国でよく使用される表現で、子供らが成長して家を離れていき、高齢者だけが残った世帯を指すものとのことです。春節の一時を家族や親族との団らんで過ごした後、再び「空巣」の状態に戻った高齢者の生活をどのように社会でサポートするか、その課題を論じるものでした。

 中国は、1999年から高齢化社会に移行しており、2009年末時点における60歳以上の高齢者数は世界で一番多い約1.67億人、総人口の約12.5%を占めます。高齢者人口は今後も毎年700万人以上のペースで増加する見込みです※1
 上海の高齢者人口は現在、全市登録総人口の約21%を占めます。2025年には35%、2050年には40.9%に上昇するとの予測です。

 高齢社会の問題は、もちろん日本にとっても他人事ではありません。そこで今回は、高齢社会に関する中国政府の施策や関連ビジネスの情況について、レポートさせていただきます。

 2011年2月11日、国務院民政部は「高齢者福祉サービス体制建設の“十二五”計画」(案)を公開し、2月28日まで意見を求めることを発表しました。この計画(案)によると、「十二五(第12次五カ年計画、2011-15年)」期間が終了する2015年までに、制度・組織機構・規模・運営状況・サービスの質・監査監督機能それぞれの面に優れた持続可能な高齢者福祉サービス体制を確立し、高齢者千人当たりベッド30床、高齢者福祉サービスの就業人口を新規に500万人増加する目標を示しました。

 また、計画(案)によると、中国が目指す高齢者福祉サービス体制は、「在宅介護」を基礎に、「地域コミュニティ福祉サービス」がフォローし、「専門サービス機構」が支えとなる、というものです。

 現実問題として、速いスピードで進む社会の高齢化に対して、現段階では中国の高齢者向け福祉・介護サービスの整備は立ち遅れています。
 そのため、中国政府では、政府主導の下に、民間企業に介護機構の運営を任せたり、民間企業の投資を募ったりと、官民の協力によってサービス向上や資金負担の軽減を達成し、早急にサービス体制の整備を進めたいという考えのようです。

 中国国内では、介護サービスを大きなビジネス市場として捉える気運が高まっています。

 介護サービス関連の市場規模については、高齢者側の消費ニーズは総額1兆元を超える一方、現在の中国市場で高齢者向けに実際に供給されている商品の総額は1千億元にも届いていないと指摘する報道もあります。この需給の差に、ビジネスチャンスがあるわけです。

 終わりに、このような動きに日系企業が関わっている一例を挙げさせて頂きます。

 2010年11月、ロングライフホールディングが、中国での介護付き老人ホーム事業参入の第一歩として、新華錦集団(山東省青島市)と合弁会社を設立しました。青島市内に介護施設を建設し、2011年10月頃の入居開始を目指すとのことです。

 また同社は、2020年までに中国全土に50施設を展開する計画を発表しています。この他にも、日本の介護事業者が中国市場への参入を検討している模様で、中国の介護サービス関連市場の動きは今後とも要注目です。

※1  国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上を高齢者としている。しかし、中国では基本的に男性が60歳、女性が55歳で定年を迎えるため、中国における高齢者は60歳以上を指す。
 高齢者が人口の7%以上を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、20%を超えると超高齢社会と呼ばれる。